2011年12月14日 of GAIPRO.NEWS

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低価格HDスイッチャーを動画配信に活かす

2011.12.14

ATEM Television Studio

 数ヶ月前に購入したATEM Television Studio、そのコストパフォーマンスの良さから当時はカメラの画調合わせのマルチビュー出力目的で導入しましたが、結局のところ使用頻度が多くはなく会社のタンスにしばらく眠っていました。しかしながらせっかくのスイッチャーですので、どこかで使う機会があれば是非スイッチングしてみたい、と思っていた矢先、弊社関連の劇団「Theatre劇団子」のLive配信の依頼があり、そこでATEM Television Studioを使ったスイッチング配信を行いました。Facebookではすでにこの配信についての詳細を述べていますが、今回はATEM Television Studioをどのように配信に活かすかを焦点にレビューしてみたいと思います。

今回の接続相関図 概要

ATEM Television Studio

最小で最大の配信を

ATEM Television Studio活用しなければスイッチャーはただの箱大掛かりなネット配信の現場ではトライキャスターなどの高価なスイッチャー&配信システムが活躍しています。しかしながら実際の配信効果や意図が見えにくいインターネット配信の大半は低予算で行われのが現状です。そのような現場で大型配信システムに少しでも近づける方法として、ATEM Television Studioなどのスイッチャーを導入する意味はあると思います。ATEM Television Studioは、いわゆる配信システムではなく単なるスイッチャーでしかありません。つまり複数の業務用カメラからの映像を切り替える装置です。ただしこのスイッチャーからのOUTをきちんとPC&配信ソフトにインプットできれば、かなり高機能な配信装置となり得ます。問題はATEM Television Studioからの映像を、いかにPC&配信ソフトにINPUTするか。そこには多少の創意工夫が必要で今回は出来る限り低価格で身近な機器を利用して配信することを心掛けてみました。(もともと予算がほとんど無い現場だったのものありますが‥)


PC入力はIEEE1394(iLink)

UNクイックシューIEEE1394(iLink)入力であれば凡庸の配信ソフトで認識する今回のニコニコ動画配信は回線の状況もありSDで行われました。そこで、まずはATEM Television StudioのHD出力を、どうやってSDにするか、またそのSDにした映像をどうやってPCの配信ソフトに送るかを検討しました。まず手っ取り早いのはUSB接続かIEEE1394接続です。そこで、グラスバレーADVC-55という、SDコンポジット映像→IEEE1394コンバーターを使用しました。これは特にコンバーターでなくてもiLink付きのDVカメラでも同様のことが出来ます。(コンポジット入力に対応したカメラ)配信ソフトが認識するUSBのコンポジットキャプチャデバイスを利用するのも言わずと知れた方法の一つかと思います。今回、配信ソフトはAdobe Flash Media Live Encoderを使用しました。もちろん、UstreamであればUstream Producerという選択肢となります。特にプロ版や、WireCastなどの高価なソフトを用意しなくてもATEM Television Studioがあれば高度なスイッチング配信が可能になると思います。(テロップなどのリアルタイム出しは限界がありますが‥)


HDからSDへのダウンコンバート

LKV381TEC製のコンバーター。激安だが遅延問題が配信のネックに次に、HD→SDですが、残念ながらATEM Television Studioの出力はすべてHDMIかHD-SDIかのHD出力のみです。(上位機種の1M/EにはSD出力がある模様)そこで悩んだ挙げ句、AmazonでTEC製のHDMI-Conpositeコンバーターを購入しました。Amazonのレビューで画質云々、遅延云々という書き込みがあり一端は躊躇しましたが、安かったので人柱的に購入してみると、これが想像より画質が良く、配信レベルではまったく問題ないレベルでかなり使えるということがわかりました。ただし問題はAmazonの口コミでも触れられていた遅延問題です。

配信はSD、鬼門は音声

ATEM Television StudioATEM Television Studioの音声はAES/EBUアンバランス入力のみ音声に関してはATEM Television StudioはAES/EBUデジタル入力(アンバランス:BNC)しか無いため、舞台仕込みマイクの音声を音響からXLRで貰ってもATEMには直接入力できません。ですので、それを一端メインカメラのXLRに入力して、カメラ側のピンジャック出力から別途PCにUSBなどで入れてしまおうと考えていました。ところが、このHDMI-コンポジコンバーターが結構な遅延があると判明したため、画と音を別でPCに入力すると、音ズレが半端ないという壁にぶちあたってしまいました。やはり考えられるのは、なんらかの形で音声をATEM Television Studioに直接入れて、あくまでATEM Television Studioから画と音を(HDMIにエンベッドして)一緒に出す、という方法しかありません。


救世主はBEHRINGER SRC2496

SRC2496AES/EBU出力はXLRの他、ピンプラグ(アンバランス)があるATEM Television Studioを購入した当時、音声入力がAES/EBU(アンバランス:BNC)しか無いとに不安を感じ、とある映像系コミュニティーで質問したらアドバイスされたのがDA/ADコンバーターのBEHRINGER SRC2496でした。ただその時は特に音声の入力用途がなかったので情報として頭の片隅に留めていた程度でしたが、今回の問題で即購入というはこびになりました。(笑)値段も思わずポチってしまうほどの低価格。結果としてXLRアナログ入力→AES/EBUデジタル変換(アンバランス)が簡単に行え、無事ATEM Television Studioに音声を入力することが出来ました。BEHRINGER SRC2496には分かり易いレベルメーターもあるので、入力レベルの調整も容易でした。これでHDMIからも問題なく音声がエンベッドされ、TEC製HDMI-コンポジコンバーターから画と音がズレることなく入力されました。

さて、これですべての接続がクリアになりました。こうして高価な配信システムでなくても、3つのカメラからのスイッチング配信が簡単に出来る体制が整ったわけです。

ATEM TSでの配信は無事終了、若干気になることも‥。

配信風景正直、筆者はニコニコ動画での配信は初めてだったので、そのあたりは配信経験のある劇団側の担当の方にアドバイスをうけながら、といった感じでしたが、今回配信で使用したソフト、Adobe Flash Media Live Encoderでは、会場の回線状況により配信サイズは320x240程度の、かなり小規模の配信に。HDをSDにダウンコンバートし入力しているので、当然比率は16:9になります。最初は何度設定しても4:3になってしまい縦長の映像での配信状態に悩んでいたのですが、Maintain Aspect Ratioチェックを入れて、ニコ動の配信ページを再起動したら、無事16:9での配信画面になりました。かくして、いろいろ紆余曲折した結果、ATEM Television Studioでの3カメスイッチング&配信はトラブルもなくすみやかに進行しました。一つ気になったことは、ソフトウェアスイッチャーでのスイッチングが一テンポ遅れる場面が稀に起こりました。ATEMとスイッチングを行ったMacBookAir11.3は、10mの極細LANで接続していました。ケーブルが原因なのか、はたまたATEMの限界なのか調べる余地がありそうです。いずれにしても配信程度のスイッチングであれは、さした問題ではなさそうです。


ATEM Television Studioで画・音が完結できれば配信映像の同時記録には有利

H.264キャプチャUSBで即キャプチャできるのは何かと重宝するATEM Television Studioには、低価格ながらUSB出力のH.264のハードウェアエンコーダーがおまけ的に備わっています。怪我の功名と言いますかAES/EBUにて音声入力したわけですから、当然USBから出力されるH.264も画・音ともに完全な状態でキャプチャーが可能です。ということで、配信と同時にATEM付属ソフトのBlackmagic Media Expressでのリアルタイムキャプチャを試みました。設定はYouTubeへのアップロードを想定して「720p、YouTube」にしておきました。配信が終わった後、キャプチャしていたMacBookPro(Core 2 Duo 2.5GHz)に取り込まれた映像を確認した所、とくにトラブルもなく、さくっと1280x720の高精細な映像がキャプチャできていました。画と音もハッキリわかるほどのズレもありませんでした。時間とともに、画と音がズレることもありません。今回の芝居は2時間ちょっとでしたが、しっかり2時間取り込まれていました。さっそくその日のうちにキャプチャした映像をそのまま関係者向けにUstream配信しました。ATEM Television Studioプログラムストリームからは音がエンベッドされた状態のHD映像が出力される通常、配信現場では、配信だけでなく配信映像の「収録」もオプションで発生することがありますが、そのような場合、ATEM Television StudioのH.264リアルタイムエンコード&キャプチャは間違いなく力を発揮することでしょう。たとえば配信後、同時収録したキレイな映像をすぐに社内イントラネットで共有、なんてことも可能です。放送クオリティーで残しておきたい場合は、ATEM Television StudioのSDIもしくはHDMIのアウトプットを、なんらかのメディアで受ければOKです。(弊社で言えば、たとえばAtomosNINJAでProRes収録など)
 もし高画質にて配信映像を同時記録しておかなければならない場面では、画と音を別でPCに入力した場合なんらかの形で別途収録方法を考えなければなりませんが、ATEM Television Studioで画・音の処理を完結しておくことで、HDでのスイッチングされた映像記録を同時に行えるのはコストパフォーマンス的にも大きなアドバンテージかと思います。


ATEM Television Studioラックケース(ハーフタイプ)に入れれば持ち運びも便利 上がSRC2496で下がATEM Television Studio

 今回の配信ではATEM Television Studioを単なるスイッチングの機器として使用しましたが、実はクロマキー処理やスーパー出しなど低価格スイッチャーとは思えない多くの機能があり、もちろんこれらを配信に活かすことも可能です。また今回はSD配信でしたが、もともとATEM Television StudioはHDレベルでのSWが可能なスイッチャーです。配信インフラさえしっかり確保できるのであれば、ATEM Television Studioを利用したコストパフォーマンス抜群の高画質・高機能配信を試してみるのも手かと思います。

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