2012年8月15日 of GAIPRO.NEWS

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特機に革命、今スライダーが面白い

2012.8.15

 DSLRの流行にともなって、巷ではどんどん面白い機材が産まれています。その中で急速に普及し始めた代表格、スライダー。ステディカムマーリンにも見られるように、カメラが小型がゆえの発想から生み出された移動撮影用特機。このスライダー、単なる移動撮影のみならず、使い方次第ではいろんな映像効果が望めます。これまで重いドリー機材を運んでいた現場にスライダーを導入すれば、これまでに無く手軽に、思わずグっとくる移動効果が得られたりします。今回は弊社でも定番になったスライダーを元に、新たな使い方と映像表現を模索していってみたいと思います。

Flo Glider

スライダーの種類、レール接点の機構の違い

MacBookAir11.3右が樹脂ベアリング、左がローラーベアリング現在、世界中各メーカーから様々なスライダーが発売されていて、長さも50cmくらいのから長いもので240cmくらいまでありますが、滑らせる方式に関しては筆者の知るところ大枠2つ、レール接点に樹脂(高性能ポリマー)を利用して摩擦係数を少なくし滑らせる樹脂ベアリング方式と、ローラー構造を使って滑らせるローラーベアリング方式があります。(樹脂ベアリング方式、ローラーベアリング方式と言っていますが、これは勝手に筆者がそう呼んでいるだけ、というのをお断りしておきます。)


樹脂ベアリング方式

スライダーローラーレスで、滑り易い樹脂をレール接点に使用している 弊社が最初に買ったスライダーのタイプが樹脂ベアリング方式のものでした。ビデオサロン通販で買ったFlo Gliderというものです。この方式は構造が単純なので、メンテナンスも簡単で、防塵という意味でもレール、接点部分を簡単に拭いて終わりです。また回転・駆動部分が無いため移動時の静音性が高いというのも特徴です。潤滑剤なども注入されておらず、ほぼメンテナンスフリーです。調整する部分も特に無いので、かなり取り回し安く入門機としては十分なスライダーです。ただし筆者の印象だと滑り出しに難があり、スーっとは出発してくれません。ためしにシリコンスプレーをレール部分に吹き付けて伸ばしてみましたが、結果は同じでした。(ただし滑りはさらに良くなるので、シリコンスプレーは常備しておいたほうがよいでしょう)滑り出しのガクっていう部分を捨てる覚悟で望めば問題ありませんが、ス~っと移動させてス~って止めるという動作を求めるのであれば、やはり後述するローラーベアリング方式となるでしょう。


ローラーベアリング方式

スライダーローラーの滑りはかなり滑らかしばらくFlo Gliderを使っていたのですが、120cmという長さは三脚に気楽に乗せられる長さで無かったのと、やはり滑り出しに納得いかなかったので、ローラーベアリング方式のKONOVA K5 60cmを導入しました。ただしこの方式の場合、滑らかさとは引き換えにある程度のメンテナンスが必要になってきます。まず買った最初にベアリング調整といった、いきなり初心者にとって難易度高いものが待ち受けています。逆に言えば、自分好みに滑り感を調節できる事になります。付属の六画レンチにてベアリング調整を行いますが、ここで注意したいのが、カメラを乗せていない状態と乗せた状態では滑りに差が出てくるということです。スライダー付属の六画レンチで細かなベアリング調整が可能ポイントは、滑りが若干キツいかなと思うくらいに調整する事で、実際にカメラを乗せた際、その重量でちょうどいい滑りになったりします。このあたりは使うカメラによって試行錯誤してみたほうが良いでしょう。駆動部分があるので当然塵ほこりの影響を受け易く、しばらく使っていると動きにガリが出てきます。ですので現場ではなるべくレール部分に異物が入らないよう配慮しています。KONOVA製はレール両端にクリーニング用のプレートが付いており、これで時折レールを拭いながら使っています。ちなみに樹脂ベアリング方式で言及した静音性という部分ですが、筆者の印象ではローラーの音はほとんど気にならないレベルですので同録も問題ないと思います。



という具合に、前者・後者ともにメリット・デメリットはあるものの、結果として、やはりローラーベアリング方式の滑らかさは優位に感じています。(現在、弊社の駆動率は8割がローラーベアリング方式のKONOVAです)

三脚と一体化する事で3次元の動きに対応

スライダー120cmは三脚単体に乗せるのは長過ぎる。60cmくらいが丁度いいもともとスライダードリーを導入しようと思ったキッカケは既存の三脚に乗せて運用できる、という部分でした。これにより、チルト、パンの動きに加え、カメラの左右移動が可能になります。この3つの動作が可能になった三脚を筆者は3次元三脚と呼ぶ事にします(w 言葉では伝わりにくいと思いますので、遊びで作ったPV(iMovieにて編集)をご覧ください。
 しかし最初に導入したFlo Gliderは実際運用してみると難ありでした。まず120cmというのは三脚に乗せるには長過ぎたのと、長いが故に端のほうがたわんでしまい、結局、移動距離は三脚中心付近の左右60cm程度。ならば最初から60cmくらいのスライダーで良かったのでは?という結論になりました。それに対象物の背景がゆっくり動く、いわゆるセンターフォロー的な効果を狙うには、それほど移動距離も必要ありません。
 そこで、せっかくなら滑り出しも滑らかなスライダーが欲しいと思い、KONOVA製のK5 60cmのスライダーを入手しました。このスライダーは値段の割に作りがしっかりしており頑丈なため、レールたわみは皆無といっていいです。ベアリングもとても滑らかで、ちょっとでも傾斜があるものなら、カメラから手を離した瞬間にスーっと滑っていってしまうほどです。これで望み通りの3次元三脚が完成、実際、これまでの多くの現場でこの3次元三脚が威力を発揮しています。ちょっとしたドリー効果を狙うなら、もう従来の大きなドリーを持って行く必要は無く、三脚とこのスライダーがあればOK。とても手軽にリッチな映像が手に入ってしまいます。
 難を言えば、KONOVAスライダーは頑丈な故に、重量もそれなりです。ですので、乗せるカメラによっては重量オーバーにより接合部分によるレールの浮き沈みが激しく出て来てしまいます。(三脚中心から端にいくほどレールが傾いてくる)弊社が主に使っているEOS7D、AG-AF105等であれば、まったく問題ないレベルですが、ちょっと重いビデオカメラの場合、こういった運用方法は厳しいかもしれません。

注意;ローラーベアリング方式は滑らか故に三脚に付けっぱなしで移動するとカメラが勝手にスライドして思わぬ事故につながる可能性が高いです。移動時はストッパーを強く締込んでおくか、派手に移動する際は必ずカメラを外したほうがいいです。


クイックシューで脱着をワンタッチ化

3次元三脚と言えども常にスライダーを三脚と一体化させておく事は無いので、多少の工夫をしました。まず弊社で定番になっているクイックシューUN8151。現在、弊社の三脚とカメラはすべてこのUN8151が付いています。そこでオス・メスのシューをKONOVAのスライダー部分とレール部分にそれぞれ設置。必要な時にワンタッチで、三脚とカメラの間にスライダーを取り付けられるようにしました。しかしここで問題発生。KONOVAスライダーはもともと3/8ネジ穴の雲台を取り付けることを想定し、最初から3/8ネジが台座内部からは突き出してしまっています。UN 8151のアタッチメント本体の穴は1/4ネジなため、このままでは設置出来ません。そこでスライダー台座部分を分解して3/8ネジを取り出し、その部分に1/4用ナットを仕込みます。今度はUN8151のクイックシュー側を分解。逆に内部からネジを通してあげ、最終的にスライダー台座裏側に仕込んだナット穴に到達させ固定、その状態で分解したUN8151の上部分をかぶせてあげる、という荒技で解決しました。シュー内部からネジを通す場合、特殊な1/4ネジ(先っぽだけネジ山のあるタイプ)が必要で、いろいろ探しにいったのですが見つからなく、結局ザハトラー三脚のプレートに付いていたネジを利用しました。(ただがネジなのに1個2500円)これで無事にスライダーにUN8151を圧着。問題なくカメラをカチャンと取り付けられるようになりました。

ナットスライダー台座裏側に1/4ネジナットを落ちないよう仕込んでおくネジ先だけネジ山のあるタイプでシュー台座内部から通すクイックシューネジをシュー内部から仕込んだナットに到達させしっかり圧着


雲台雲台も必要に応じてワンタッチ化雲台雲台を付けるとカメラに角度をつけることが可能になる雲台AF105程度であれば、極端に安定感が悪くなるということは無い


スライダーこれで自由な角度でドリー効果が望めるしかしながらこの仕様だとカメラの方向が正面のみになるため、真横移動かセンターフォロー効果しか狙えません。たとえば商品を斜めから流していきたい時や、レールが移らない範囲で対象物にゆっくり迫っていくような画を撮るには、スライダーとカメラの間に雲台も必要になってきます。そこでヨドバシ.comでSLIK製の雲台を購入、もちろんUN 8151でワンタッチ化し、必要な時に追加できるようにしました。名付けて、「3次元ブロック三脚!」。必要な場面で必要なものをブロックがごとくカチャンカチャンとカスタマイズ。(三脚→スライダー→雲台→カメラ)まさに現場主義の三脚と言えます。現場でいちいちネジ止めする必要も無く、実際の運用もすばらしくスムーズです。さて、この3次元ブロック三脚でいくつか素材を撮ってみました。


スライダーの登場は革命といってもいいかもしれません。そもそもDSLRムービーが一つの業界革命でした(良くも悪くも)。それが発端で周辺機器にも多くの革命が起きています。個人ではとても所有できなかった高価な特機たち。機材屋でレンタルし、ハイエースに汗だくになって積み込み、レール積み込み時には手をはさんで痛い思いをし、ロケ終了後ボロボロに疲れた体で、寝不足の目をこすりながら返却に向かった日々。それを思うとこの気楽さは‥ちょっと複雑な気分です。しかしながら、やったもん勝ちの世界ですので、常に新しい表現や方法を模索しつつ、積極的に新しいものに目を向けていくことで、つぎに繋がっていくこともあるでしょう。スライダーは一つの道具でしかありませんが、その使い方次第でとても多彩な映像表現を得ることができる、小さくて大きい機材かもしれません。

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