2012年8月20日 of GAIPRO.NEWS

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FCP7ユーザーから見たPremiereProCS6 -後編-

2012.8.20

 さて、今回はFCP7と細かく比較しながら、もう少しPremiereProCS6を掘り下げて見ていきたいと思います。かつてPremiereを使ったことのある方々は、FCPより便利な部分を既にある程度分かっていると思います。特にCSになってからは「あとは安定感だけなんだけどなぁ」と思う部分もあったかもしれません。しかも愛して止まないFCP7がディスコン決定、という現状です。FCP3.0からもう10年近くFCPで編集してきた筆者の立場から、「ぶっちゃけ今回のPremiereはどうなのよ?」というのをそろそろ結論づけたいと思います。

すばらしきタイトル作成機能

Title3Dそれなりに使えたFCPのTitle3Dまずはここ。FCP7でのタイトルワークに苦労していた方も少なくないと思います。PSで作成してFCPに持って来た方も多かったでしょう。かろうじてバンドルされていたBorisのTitle3Dは、それなりにエッジや文字の編集が出来たので、弊社ではよく使っていました。しかし微妙なバグもあり(日本語だと文字の穴の中にエッジ色が付かなかったり)タイトルワークにはとても苦労していました。AEをタイトラー代わりにも使っていました。FCPで背景となる場面の静止画を一端書き出し、それをAEに呼び込んでガイドにして、タイトルをデザイン、それをアルファ付きTIFFで書き出してFCP7のタイムラインに乗せていました。この方法は後で修正が来た時でもAEに戻って修正し、既存のTIFFを上書き保存すればすぐにFCPのタイムラインに反映されたので、馴れるとそれなりにスムーズなワークフローでしたが、PremierePro内蔵のTitle Designerを一度使ってしまうと後戻りできません。Title Designerの基本操作は他のAdobe製品とほぼ同じで、文字詰めやカーニングのショートカットも共通です。エッジ付け、シャドー、その他の装飾も思うがままです。さらに便利なのは、新規タイトルを作成する際、タイムライン上の再生バーの場面を自動的に背景にしてくれるところです。(あくまでガイドとしての背景)これにより最終的なアウトプットのイメージが簡単にでき、タイトルデザインを追い込むことができます。気に入ったタイトルをスタイルとして登録できますし、複製して文字だけ打ち込み直すのも簡単です。


結局は便利、AEとの連携

PremiereCS6FinalCutPro同様、クリップの設定にシーケンスを合わせてくれるようにタイトル機能の充実もさることながら、やはりAEとの連携は便利です。FCP7時代は、AEで作ったものをProRes4444のアルファ付きで書き出し、FCP7のタイムラインに乗せるとリアルタイムで合成&再生してくれたので、弊社はよくAEでモーションタイトルを作り、一端ProResに書き出したムービーをFCP7に持って行っていました。タイトルは修正の可能性が一番高いので、修正する際は、またAEに戻って修正し、再度書き出し直してFCP7のタイムラインを更新する、という方法をとっていました。PremierePro CS6の場合、AEのコンポジションをそのままタイムラインに乗せられるので、書き出す必要もなく、修正もタイムライン上からコンポを選択してコマンド+Eで簡単にAEに戻って修正、Premiereのタイムラインに即座に反映することが可能になります。しかも簡単なモーションタイトルであればリアルタイム合成&再生も可能です。このフローを一度味わってしまうと、もうFCPには戻れません。
 AEとの連携という意味では、周知の通り、PremiereProのタイムラインを簡単にAEに持って行けるのも大きいです。FCP時代はXMLに一端書き出すなどしてAEに持って行っていましたが、PremiereProの場合は、必要な素材をPremiereで編集、それを全選択でコピー、AEのコンポにペーストして持って行けますし、PremiereProのタイムライン上で持って行きたいクリップを選択し、ファイル/Adobe Dynamic Link/AfterEffectsコンポジションに置き換え で一瞬にしてAEに飛ばすことが可能です。ダイナミックリンクを使うと、AEで編集したものがレンダリング無しに即座にPremiereに反映されます。ただしダイナミックリンクを使うのはケースバイケースだと思います。カラーグレーディングやちょっとした映像修正なんかは、ダイナミックリンクが非常に役に立つでしょう。逆にAEでグリグリと作り上げていくようなものであれば、コピペで完全にAEに映像を渡してしまい、一端AEで書き出したほうがいいかもしれません。


AEの仕様に近いインターフェイス

PremiereCS6エフェクトコントロールは、ほぼAE仕様。イーズも思いのままPremiereProのインターフェイスはさすがに同メーカーだけあってAEに近いです。特にエフェクトの扱いは同じで、エフェクトウインドウにて簡単にコピペが出来ますし、「f」ボタンでON/OFFが出来るのも同じです。またモーションのイーズイン、アウトも設定できますし(空間、時間ともに)、モーションパスの作り方もAEのそれに近いです。これらをFCPでやろうとすると、非常に大変でした。特にモーションのイーズは出来なかったといっても過言ではありません。(厳密には出来ましたが、とても大変でわかりずらかったです)簡単なエフェクトや動きであれば、AEに行かなくてもPremiere上である程度完結できるかもしれません。AEのプラグインがそのままPremiereで通用するのも大きいです(種類によります)また、AEにはオプションキー+ドラッグで、クリップを乗り換える便利な機能があります。これはPremiereでも通用します。例えば、タイムライン上にある既存のタイトルもしくはグラフィックを、プロジェクトウインドウ(FCPではブラウザ)にあるそれに変更したい時など、プロジェクトウインドウで選択した状態で、オプションキーをおしながらタイムライン上の任意のクリップ上にドラッグアンドドロップで重ねて離してあげると、編集結果を変えずにクリップだけ簡単に変更できます。AEの操作に馴れている方であれば、PremiereProの操作性はしっくりくる部分が多いと思います。


illustratorのデータがネイティブで使用可能

PremiereProCS6AIファイルはアートワーク以外の部分がアルファで抜ける 普段、illustratorでタイトルなどの要素を作成する方には朗報です。筆者もillustratorでアートワークを作成することが多いので、とても重要な部分です。FCPではPDFとして扱われアルファが抜けなかったので、いままでは一端PSに書き出してFCPに持って行くか、AEに呼び込んで書き出し→FCPという方法をとっていました。しかしPremiereでは、AIファイルも自動でアルファが付いた状態で呼び込め、そのまま映像と合成してくれます。ただAEのようにアートボード内の位置が踏襲されず、何故か強制的にオブジェクトを中心として呼び込まれてしまいます。ですので、アートボードでせっかくレイアウトしても、Premiereのモーションでもう一度レイアウトし直す手間があります。これは仕様なのかもしれませんが、個人的には若干残念な部分です。


FCPで出来た○○はPremiereでは?(解決点と不満点含む)

PremiereProトランスフォームアイコンを押せばプログラムウインドで直接つかんで移動や拡大縮小ができる とは言っても、仕様の微妙な違いで時々戸惑うこともあるでしょう。FCPで出来たのに、なんでPremiereで出来ないんだ!って思うことも多いものです。例えばマーカーがタイムライン上でクリップ上に簡単に付けられなかったり、シーケンスの設定が後から変更できなかったり。これはら自分の勉強不足が故の事と思っておりましたが、先日のAdobe映像塾で完全に出来ないという事を知り、若干のショックを受けました。(メーカー側の方のお話なので確かだと思います。)もう一つ出来ないなぁと思っていた事があったのですが、解決したものもあります。それは、FCP7では「表示」メニューで「イメージ+ワイヤーフレーム」を選択しておくと、プログラムウインドウ上でクリップやテロップをつかんで移動出来ました。これがPremiereProだと数字変更でしか移動できないと思っていました。ところが、「モーション」の文字の横にある小さなボタン「トランスフォームアイコン」を押すことで、同じことが可能でした。(直接「モーション」という文字をクリックするもでもOK)
 シーケンス設定が後から変更できないのは、新しいシーケンスを作ってそこにすべての要素をコピペし直すことで対策できますが、マーカーは一端ソースウインドウに表示させて打つしかなく、とても不便です。AEでさえ、再生しながらクリップにマーカーが打てるので、同じ仕様にしておいてほしかったです。いろんなタイミング合わせの場面で不便で仕方ありません。ここは是非Adobeの開発チームに改善していただきたい部分です(開発が大変なのを重々承知の上で)
 あと、ここからは、勉強不足のため、もしかしたら出来るのかもしれませんが、「出来ない」前提で勝手に不満を申し上げます。まず音の問題。FCP7と同じように、後からタイムライン上で簡単にステレオ、モノ2chに変更できるようにしてもらいたいです。(この問題は前編にて言及しています)同時に、プログラムウインドウでの音のプレビューが、再生までに一テンポあります。大量の音声ファイルをプレビューするときには、結構なストレスです。これはPrのもともとの仕様なのでしょうか?また、マシンを移動する際にいちいち始まるキャッシュの作成、これはとてもストレスです。環境設定/メディア で「可能であればメディアキャッシュファイルを元のファイルの隣に保存」にチェックを入れても改善されませんでした。一度キャッシュが作成されたらPCを移動したとしても既存のキャッシュを使えるような仕様にしてほしいです(どなたか、解決方法知ってる方いらっしゃったら教えてください)
逆に言ってしまえば、筆者が「出来ない」と思った事は、これくらいです。あとはほぼFCPと同様のことが可能なので、致命的なものは一切ありませんでした。


弊社なりのFCP7 → PrProCS6 まとめ

・インターフェイス

 FCP7と酷似しているが、AEの要素も入っている感じ。FCP7からの移行は他のソフトよりかは圧倒的に分かり易い。FCP Xに実装されたクリップスキミング機能など、いいとこ取りの部分もある。

・ショートカット

 IOでのインアウト設定、JKLキーでの再生系の操作は共通だが、他はFCP7とはかなり違う。ただしAdobeの他のソフトに合わせている部分もあるので、基本的には新しくショートカットを覚えていったほうがいいかもしれない。もちろんプリセットでFCP風というのもあるし、自分でカスタマイズも可能なので困らない。

・素材のキャプチャ、取り込み

 ファイルベースの場合、FCPはProRes編集が前提の部分もあり「切り出しと転送」でProRes変換して編集するが、Premiereは基本的にネイティブなので、そのまま呼び込んでタイムラインに乗せられる。「切り出しと転送」に近いことは付属のPreludeというソフトで出来る。しかもProResはもちろんのこと、他のコーデックに変換しながら取り込めるのは便利。カノープスHQやDNxHDというのもアリということになる。テープキャプチャの場合はほぼ同じ仕様。各ボードに関しては、それぞれのサポートの違いがあるので何ともいえない。最後に、取り込み時、FCPで馴れていると、正直Prのキャッシュ作成の時間はストレス。

・PS、AIファイルの呼び込み

 FCPではPSファイルはかならずレイヤーごとに呼び込まれ1シーケンスとなったが、逆にこれがストレスになる場面もあった。わざわざTIFFなどで書き出していた方も多いと思う。Premiereでは呼び込む時点でレイヤー状態で呼び込むか、レイヤーを結合して呼び込むかを選択できる。AIはさきほど述べた通り、PremiereProであれば、要素以外の部分はアルファが自動的に付き(透明になり)呼び込まれる。

・編集

 ほぼ同じ仕様。TC打ち込みによる編集、トラックのターゲット指定でのコピペ、ギャップはギャップとして残る、デリートキーでのギャップの詰め、ソースとプログラム(タイムライン)とのマッチフレーム機能、音声の調整(ただし音声はステレオトラックとモノラルトラックの2種類あったり、戸惑うところもある)またFCPの場合、前後にクリップがあるとスローをかけられなかったり、ギャップを埋められなかったりしたが、Premiereでは可能な限り出来るようになっているなど、編集に対して細かな配慮が見られる。

・書き出し

 FCPは、ファイル/書き出し/QuickTimeムービー で、シーケンスそのままの設定で書き出すことが出来たが、PremierePro CS6でも、書き出しウインドウ上の「シーケンスの設定を一致」にチェックを入れて書き出す事で、同様にシーケンス設定のまま書き出せる。ダウンコンに関してもFinalCutProの場合、どうしてもジャギってしまったが、Premiereの場合、「最高レンダリング品質」にチェックを入れて書き出せば、比較的奇麗にダウンコン出来るらしい(未確認)

8/22追記:AVCHDネイティブからDVD-MPEG2へのダウンコン書き出しですが、高画質にチェックをいれると幾分マシなダウンコンで書き出されましたが、結局のところあまり今までと変わらず。ネイティブ編集が可能なだけに残念な部分です。しかも高画質にチェックを入れると、弊社環境で2時間程度の尺が12時間(実時間の約6倍)かかりました。書き出しは今後、要検証です。

・安定性

 FinalCutProはAppleネイティブのソフトだけあって、その安定性はすばらしかった。あくまで筆者の印象、というのをお断りしておいて、PremiereProはCS5.5までは安定性に不安があった。今回のCS6はそれに比べて格段に安定しているように思える。ここ数ヶ月、実戦投入し作業してきたが、落ちたことはまだ無い。以前にあったショートカットが戻ってしまう、といったバグも無かった。ソフトを開いた瞬間に一瞬だけすべての関連ファイルがオフラインになるので、ちょっと焦るくらい。一度だけプロジェクトが開けないというトラブルが起きたが、ソフトをアップデートを行ったことで解決した。AVCHDネイティブの場合、ProResほどのサクリ感とは行かないが(一瞬もたつく場面もある)十分に実用歴なレベルで、比較的サクサクっと編集できている。もうトランスコード時代には戻れなくなってしまった。安定度は引き続き検証していきたいと思っているが、現状、とても安定している印象。


3回に渡ってつらつらと書いてきましたが、そろそろまとめに入りたいと思います。結局の所、以下のような方はスイッチする価値があると思います。

1)普段、AEとの連携して作業する事が多い

2)Macで長尺のAVCHDを編集することが多い(AVCHDネイティブ編集が必要)

3)MacでAVCHDネイティブでのマルチカメラ編集をやりたい

4)FinalCutPro Xの仕様は致命的にNG、でもMacでFCP7に近い感じで編集したい

5)FinalCutPro Xの関連ファイルが専用のフォルダにまとめられてしまうのが許せない

6)普段PSやAIでタイトルやアートワークを作って持って行くことが多い

7)前々からPrにスイッチしようかと思っていたが安定感という部分で踏みとどまっていた。

 筆者のノンリニア編集の始まりはPremiere3.0からでした。(Proになる前のVerで)当時、FireMaxというボードをMacintosh G3につっこんで、IEEE1394経由でテレビに映し、編集していました。そしてPremiere5.0の時にFinalCutPro3.0に移行したのですが、最初は仕様の違い、特にABロール編集でないことに激しい抵抗感がありました。しかし使う過程でFCPが秀逸なソフトであることが分かり、気がつくともうPremiereに後戻りできなくなっていました。
 新しいソフトに移行する時、少なからず抵抗があるものです。しかし今回のPremierePro CS6は安定感と機能充実という面で十分スイッチに値するソフトと思います。終わりの見えたNLEソフトから抜け出せない「セブンの難民たち」よ、今こそ動き出す時が来たようです。

関連記事/関連リンク

【GAI News.120625】FCP7ユーザーから見たPremiereProCS6 -前編-
【GAI News.120731】FCP7ユーザーから見たPremiereProCS6 -中編-

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