2013年1月31日 of GAIPRO.NEWS

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Z5Jユーザーから見たGY-HM600/650 -前編-

2013.1.31

 テープとメモリー(カード)のハイブリッド記録ができるZ5Jは、報道、取材、ブライダルの現場を中心に絶大な支持を得ていました。操作性についてもバランスは絶妙で、このクラスのハンドヘルドカメラではある意味SONYの最終形かと思っています。弊社でも、あらゆる場面で長らくZ5Jを愛用してきました。しかしながら完全ファイルベースに移行した現在ではHDVというメディアが若干使いづらくなって来たのは事実です。そこで順当に考えると、後継機のNX5Jへリプレイス、ということになると思うのですが、そんな中、黒船のごとく現れたのがJVCケンウッドから発売されたGY-HM600/650でした。
gy-hm650_01.jpg このカメラの登場で弊社の事態は大きく変化しました。ほぼ同時期に発表されたSONYのPMW-160とPMW-200、という選択肢もあるのですが、残念な事に本機のみのバックアップ記録(デュアル記録機能)がありません。(メディアはSxS)GY-HM600/650の注目すべき点は、フジノン23倍ズームというとんでもないレンズを搭載しながら、汎用性高いSDカードで2スロットを活かしたバックアップ記録が出来る事です。(NX5Jのメモリー回しっぱなしと同じ事が、一方のSDカードで可能です)しかもその収録方式も豊富でXDCAM EX互換のMP4に始まり、MXF(MPEG2)、MOV(MPEG2/.h264)、さらにAVCHDにも対応しています。(HM600はMXFやHDでのH.264収録には未対応)GY-HM650では、片方のスロットでHD記録しながら、もう片方でSDやPROXYでデュアル記録する事も可能です。またWi-Fiによるリモート機能が備わっていたり、中核をなす画像処理エンジン「FALCONBRID」のポテンシャルの高さから、今後のファームアップによる機能アップも期待されています。実際にファームのアップデート提供が発売後も行われており、一層使いやすくなっていく様子は、JVCケンウッドがこのカメラにいかに注力しているかを感じます。
 今回運良く、とあるプロジェクトに参加でき、GY-HM650をお借りすることが出来たので、Z5Jユーザーの立場からGY-HM650を実際の現場に投入し徹底的に検証してみました。そこで前編、後編と2回にわけて、GY-HM650の使用レポートを書いてみたいと思いますが、個々のフィーリングは人それぞれかと思っていますし、あくまで弊社の主観が入っていることを最初にお断りさせていただいた上で、参考にしていただければと思います。

最強か?フジノンx23ズームレンズ

HM650脅威の23倍ズーム。操作感も良い注目のフジノン23倍ズームレンズ、広角側29mmから667mm(35mm換算)の23倍ですから、ほぼこのレンズ一本であらゆる場面をカバーできるスペックです。レンズ固定式ではありがたすぎる仕様です。現場では、ここまで寄れるのか?という驚きもありました。なにより弊社はデザインで心を鷲掴みにされた?(笑)フジノン製レンズのフィーリングは期待通りで、それぞれの独立3リングの粘り具合もZ5Jより好感触。特にフォーカスリングは面積が広くて扱い易いです。単なる平坦なリングでなく放送用レンズのようにレンズ口側に盛り上がっているので指が止まりやすく、Z5Jのように、バタついた現場でピントリングと間違ってズームしてしまった、といった事も少なかったです。最初に量販店で触った際、電子駆動式がゆえのズーム動作の遅延がとても気になりましたが、実際の現場運用では結果的にまったく影響がありませんでした。Z5Jのズームも電子式で、遅延はかなり押さえられており優秀だったのですが、何故か時折ズーム動作のムラが起こり悩みの種でした(弊社の使い方がヘタ?ってのもある?)GY-HM650のズームリングは適度なトルク感とあいまって、かなりスムーズなズーム操作が可能でした。収録映像を見返しても、Z5J(NX5J)の時は、ズズズっていうズームのムラをよく確認していたのですが、GY-HM650はムラもなく綺麗なズームが出来ていたので、ああ、このレンズいい!とニンマリ。2日間に及ぶロケの終盤には、動作遅延などレンズへの不安感は完全に払拭されました。グリップ及びハンドル部のズームレバーによるサーボズームもかなり使えましたが、頻繁なサーボへ切り替えは正直面倒だったのと、手動のズームリングで十分イケたのであまり使いませんでした。ただ、固定での超スローズーム等では重宝すると思います。Z5J(NX5J)の場合は手動/サーボの切り替えは無いですが、端で止まらない、いわゆる「回りっぱなし」になってしまいます。弊社は切り替えがあったとしても端で止まってくれるほうが助かります。この部分もHM600/650に注目した理由の一つです。
【AF/フォーカス回り】AFの精度は若干話題にはなっていましたが、確かにZ5JのAFには及ばないものの、ファームでの対応で確実に良くなっています。ただ、フォーカスアシスト(白黒画面にエッジを色付で見せるもの)が結構使えたのと、録画中であっても、ボタンの位置がリングを触りながら親指で押せる位置にあるので、こういったアシストをウマく組み合わせる事でマニュアルでの運用のほうがやりやすいと感じました。Z5J(NX5J)のように、どこでも色が付いてしまうピーキングではなく(弊社の印象では)繊細にエッジの色を表現してくれるので、ピンの山がつかみやすかったです。逆に考えると、Z5Jではピンの山がつかみ難く、あきらめてAFにしてしまった場面は多かったかもしれません。いくらAFが優秀だったとしても、いつフォーカスがズレるか不安感がつきまとうのは事実です。そういう意味では、確実にマニュアルで運用できるレンズのほうがいいのかもしれません。
 引きボケに関しても現状では感じませんでした。現場でもガっと寄ってピンを合わせ、シャッって引いて撮影していましたが、あとで見返しても、NX5Jで話題になっている引きボケによる画面の甘さ?は今の所無い模様です。後述するプッシュAFも「タッチ」で高速ピント合わせを行ってくれるので、対象物にグっと寄ってとりあえずプッシュオートをタッチ、目的の画角に引いて撮影、というのもアリかと思いました。
【OIS/手ぶれ補正】こちらも、発表前に触らせていただいた際、若干の違和感があったのは事実ですが、発売後のファームで解消されている印象です。通常の手ぶれだとZ5Jと比べてもそれほど違和感なく、NX5Jの「アクティブ」と同じく、レベルを「高感度」に設定することもできました。ただしNX5Jのように、OISのボタンで、無し、通常、アクティブと切り替わるわけではなく、メニューから選ぶことになるので、ここは好みが分かれるところ。弊社としては、NX5Jの、数回押して手ぶれの無しと感度を変える、というのは時に混乱する場面があったので、逆に感度はメニューで変えられるほうが助かりました。もし頻繁に手ぶれ補正の感度を変えたければ、後述する「お気に入りメニュー」に入れておくことで対処できると思います。
【プリセットズーム】ちょっと便利かなと思ったのがプリセットズーム機能。あらかじめ2点のズーム値をメモリーしておき、ファンクションで呼び出すと、すぐにそのズーム値に移動してくれるというもの。ちょうどZ5Jのショットトランジションのズーム版といった所。(サーボがON時に動作)動作が一定なので、合成用途(人有り、人無しバージョンを撮影し、あとで合成など)や、スタジオ撮影など画角を固定し、フル、アップのズームをプリセットしておくなど、便利な使い方は想定できます。若干残念なのはズームの始まりと終わりのイーズ(なめらかに始まる、止まる)が効かないところです。今後のファームアップデートで、イーズが選べる使用になることを望みたいです。


Z5Jライク+レンズ回りを考えたボタン配置

HM650ボタンが大きいので撮影中もそっと押しやすい2日間、実際の現場でじっくりHM650を使ってみて、とても良いなと感じた部分に操作性があります。レンズの操作性は前述した通りですが、その他としてファンクションボタンの押しやすさや配置がいいです。Z5Jのファンクションボタンは小さいのと埋もれ気味なので、レンズを左手で操作しながらは、なかなか押しづらい感じでした。(さらにNX5Jでは何故かもっと押しずらい位置に変更された)特にグリップハンドル下のボタンを押すのは結構ストレスでした。HM650は前述した通り、フォーカスアシストボタンなど、レンズを操作したまま親指を伸ばしても、ボタンが大きく録画中でもそっと押しやすいのです。(もちろん、各種ファンクションボタンの機能は変更可能)その他、ほぼZ5Jと同じ配置なので、現場ではあまり迷う事はありませんでした。そういう意味では、Z5Jライクだけど、Z5Jの不満点を解消してくれているような印象を受けました。
HM650縦軸にシャッターSP、横軸にAEシフト。コロコロに比べかなり快適な操作性 Z5Jと大きく違う点は、側面にある大きな円状の十字ボタンです。これはHM700/750のデザインを踏襲しているみたいですが、デザインとしては好みです。で、実際の使い勝手はどうかと言いますと、なるほどよく考えられています。通常のメニュー呼び出し操作や再生モード時の操作の他、撮影中のシャッタースピードの変更やAEシフトも、この十字ボタンで操作できます。撮影中は上下でシャッタースピードの調整、左右でAEシフトです。馴れるとこの操作は非常に気持ちよく、Z5J(NX5J)の転がしにくいコロコロよりか直感的で操作しやすいです。(特に手が寒さで動かしにくくなっている時など、コロコロホイールって仇になりますね)
HM650このRECボタンの位置は現場では大変便利なのだが‥。 またHM700/750やPanaのカメラに馴れている人など「WBの調整ボタンと間違えてしまう」と、若干不評であったレンズ付け根のRECボタンですが、弊社としてはこの位置にRECボタンがあるのは、かなり便利でした。特に三脚運用の際は、もうココのRECボタンは手放せません。放送用レンズは、グリップ前にRECボタンが付いていたりしますが、それと比較すると、逆側ということになります。三脚運用の場合、右手はパン棒を握っているので、レンズを触る左手でRECを押せるのは、結構便利なんです。実はPanasonicのAG-AF105もカメラ左側面のEVF付け根あたりにRECボタンがあり、三脚運用の際に便利さを感じてたのですが、側面だと強く押した時、若干カメラがパンしてしまう恐れもあるため、弊社としてはHM600/650のレンズ付け根の位置はベストです。ただし、今度はコレに馴れてしまうと、Panaのカメラ等で誤ってWBを変更してしまいそうで、怖いですが‥。そういう意味では、ここもファンクションとして機能し、メニューで変更できるようになれば今後の他のカメラの運用上助かるかもしれません。


考え抜かれたメニュー操作

HM650通常メニューと「お気に入り」メニューは液晶付け根の「displayボタン」で切り替え特筆すべきなのは、開いた液晶ビューファーの脇にある十字ボタン(スティックタイプ)。弊社としてはタッチ液晶は操作性にかなりストレスを感じるので、ここにハード的なスイッチを設けてくれた事は高く評価したいです。現場で使ってると、かなりの便利さを感じます。前述の通り、本体側面の円型十字ボタンと基本的に同様の動きをしますが、撮影中の人間工学的には絶対ココです。ここからのメニューアクセスも便利ですし、よく呼び出すメニューを「お気に入り」登録しておけば、事実上ボタン一つで目的の項目に飛ぶ事が可能です。特にファンクション割り当てが出来ないもので、一発で呼び出したいという要望は、このお気に入り機能がカバーしてくれます。(詳細な操作性は割愛します)もちろん、再生モード時にはクリップの操作がここで出来ます。HM650十字スティックにファンクションとしてWBを割当ておくとケルビン可変時に便利さらに秀逸なのは、この十字スティックの上下左右にもファンクションが割り当てられる所です。これを合わせれば、実に11つのファンクションボタンが存在する事になります。ハード側で個別の機能ボタンが設けられるのは、そのカメラの操作性に直結すると思っています。バタついた現場で、いちいちメニュー階層をたどって呼び出すのはとても骨の折れる作業です。そういえばZ5Jはボタンで簡単にケルビン数値(100単位)の変更ができましたが、HM650ではいちいちメニュー階層をたどらないとケルビンの数値変更が出来ないものと思っていました。しかし、この十字スティックの上下左右のいずれかにホワイトバランスをファンクションとして登録しておけば、ほぼZ5Jと同じ操作が可能になりました。十字スティックをチョンと倒すとケルビン指定の表示が現れ、あとはそのまま十字スティックで目的の数値を選んでいくだけです。かなり気持ちいい操作感なので、Z5Jユーザーは、ここにホワイトバランスの項目をファンクションとして登録しておく事をオススメします。(ただし、実機側面下のホライトバランスのスイッチで「プリセット」にしてある場合のみ数値が出る。その他の場合はWBシフト画面になる。)


実用的なプッシュオート

HM650AFはタッチで瞬時フォーカス、長押しでジワっとフォーカス移動 フォーカス、アイリスもそれぞれ独立してプッシュオートボタンがあり、特にフォーカスのプッシュオートは、タッチで瞬時フォーカス、長押しで滑らかなフォーカス移動が可能です。これは現場で結構重宝しました。とりあえずバタついた時はフォーカスとアイリスのプッシュオートをポチポチと押してしまい録画を開始してしまう、という感じでも、それほど怪我はありませんでした。特にフォーカスはボタンタッチでシャッって素早く合わせてくれるので気持ちいい。Z5Jのプッシュオートは非常に押しずらいボタンだったので(なんであんな押しづらくしてしまったんだろ?)気付けば結局使わなくなっていましたが、今回は使いまくりでした(笑)とある対象物から、距離の違う対象物に移動する際は、長押しのプッシュAFを使うこともありました。こちらは、すべての場面で万能というわけではありませんでしたが、ある一定の条件下では非常に役に立ちました。欲が出るとすれば、グリップ上部にあるUSERボタン7に、プッシュオートを割り当てられるようにできたら最強かと思います。ズーム操作途中でプッシュAFを使いたい場面は多くあり、グリップ部にプッシュAFボタンが割り当てられれば、ズームレンズを操作したまま、右手人差し指で一時的にオートにできるからです。これはZ5Jの時から思っていたことで、今後のファームで対応してくれたらとてもステキだなと思います。



 総合すると、高倍率で放送用レンズライクな扱いやすいズームレンズに、全体的にZ5Jによく似た操作性でありながら、Z5Jよりレンズ回りの操作性が格段に良くなっており現場の事をかなり想定して作られていると感じました。Z5Jに馴れている方なら、いきなり現場に投入しても、さほど怪我はしないと思います。(事実、筆者もそうでしたし)これでAFの精度が今後ファーム等で改善されていくとしたら、もう向かう所敵無し?なのではないでしょうか? 実際の現場で運用してみると、いろいろわかるものがあり、数時間、量販店で操作したレベルの印象はアテにならないというのを痛感しました。しかしながら、HM600/650は注目はされているものの、業界ではまだまだ知名度が低く現状ではほとんどのレンタル機材屋さんにも置いてありません。そういう意味ではメーカー側で積極的にデモ機の貸し出しを行ってもらえると、一層このカメラの良さは分かってもらえるのでは?と思います。
 今回の前編では、注目のx23フジノンズームレンズと、全体の操作面を中心に触れましたが、次回はもう少し細かい部分(液晶ビューファーや音声周り、明るさや精細感などの記録面、記録後のワークフロー等)を掘り下げて書いてみたいと思います。ただ弊社としては、このクラスのカメラに求めるものは、画質より操作性です。そういう意味でも、前編で紹介させていただいた内容は、おおよそ弊社が言いたかったことのメインかと思います。


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