2012年2月13日 of GAIPRO.NEWS

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やっと来た!Mac.でAVCHDマルチ編集

2012.2.13

Mac

 弊社の映像編集環境はMacです。当然エディットはFinalCutProということになりますが、最近のHDビデオカメラで標準となっている記録方式「AVCHD」の映像を編集するには難がありました。ネイティブ編集は不可能な上、ProRes変換によるファイル容量の増大。短尺の案件ならいいですが、長尺の記録映像(舞台やセミナー収録、ブライダル等)では頭をかかえていた編集者も多かったと思います。弊社も関連劇団「Theatre劇団子」の2時間程度の舞台収録&編集が定期的に発生することもあり最近のHD収録後の編集に悩んでおりました。そんな中投入された64bitネイティブのFinalCutPro Xでしたが、残念ながらドラスティックすぎる仕様の変更によりアップグレードを踏みとどまるしかありませんでした。一方で去年のInterBEEのグラスバレー社(旧カノープス)のEdiusデモではAVCHDのマルチアングル編集をサクサク編集していました。これを見てFCPからEdiusに乗り換えてしまった方を何人か知っています(笑)実は筆者も乗り換えることを考えていました。

AVCHDがネイティブで扱えるFCP X

FinalCutPro Xぱっと見はiMovie。最初は確かにクセがあるかもしれない。Edius導入のため、BootCampでWindows7をインストールし準備していたところ、FinalCutPro Xのバージョンアップの知らせが届きました。今回の変更内容はなかなか魅力的なもので、その中にマルチアングル編集も入っていました。そこでやっと筆者の重い腰が持ち上がりました。FinalCutPro7との同居は厳しいとのことで、別のパーテーションにLionをインストールし、そこへFCP Xをインストール、さっそく立ち上げてみました。すでにiMovieを好んで使っていた筆者にとって全体的なインターフェイス、取り込み方法やブラウザの見方はそれほど違和感ありません。「プロジェクト」と「イベント」フォルダもiMovieで慣れっこです。特にスキミング機能は必須です。とりあえず劇団の公演後の20分程度のアフタートークを取り込んでみました。TwinRAIDer miniTwinRAIDer miniは2.5inchのHDDで小型のRAIDシステムが組める。接続はFW800ほか素材は3ストリームがAVCHD(カメラはXA10とGH2)で、あとの1ストリームはZ5Jの映像をATOMOS NINJAで受けたProRes422LTの素材でした。使用したHDDは、秋葉館で販売していたTwinRAIDer mini(2.5inch HDD 7200rpm 750GBをRAID0にてストライピング)。取り込まれた素材を「イベントフォルダ」内で見ると、AVCHDはmov形式に変換されて取り込まれてました。movという“形式変換”があるので「その時点でネイティブではないじゃん」というつっこみは今回は置いておきましょう(汗)容量は変化していないので、中身はあくまでネイティブだということが分かります。ためしにAVCHD素材をタイムラインで再生したり、テロップを乗せたりしてみたが、普通にリアルタイムで編集出来ました。これでFCP Xの仕様や概念になれるというハードルをクリアできれば、Macでの快適なAVCHD編集ライフを手に入れられるということが分かりました。


分かりやすくなったマルチアングル編集

画面音の波形での自動同期は思った以上に快適マルチクリップ作成はFCP7から比べると劇的に分かりやすくなっていました。イベントブラウザでマルチクリップにしたいクリップを選択し、「ファイル」メニューから「新規マルチカムクリップ」を選ぶだけです。秀逸なのは、その際「同期にオーディオを使用」にチェックを入れると、解析時間は若干かかりますがオーディオ波形から自動的にすべてのクリップの同期をとってくれます。万が一同期とれていないクリップがあったとしても、FCP Xのマルチクリップはいつでも展開して同期を修正することが出来ます。イメージとしては、4つのクリップがネスト(AEで言うプリコンポ)されてる状態で、それをいつでも展開することが出来るのです。そしてネスト化されたマルチクリップをタイムライン(FCP Xでは「シナリオ」という概念になっています)に乗っけて「ウインドウ」メニューから「アングルビューアーを表示」で、プログラムビューの隣にすべてのクリップビューが表示されます。今回は4カメでの表示でしたが、設定により幾つのカメラを表示するか、またどのように表示するかも変更可能です。便利なのはマルチアングルビュー表示のショートカット。コマンド+シフト+7で表示、非表示を切り替えられます。



画面アイコンで「音と画」「画のみ」「音のみ」を切り替えられるのも分かりやすいアングル変更はとっても簡単で、アングルビューアーで「音と画」「画のみ」「音のみ」のアイコンをクリックし欲しいアングルのテンキーを押すだけです。今回は4カメでしたので、1〜4のテンキーを押すと、スクラブバーの位置でクリップをカット&アングル変更してくれました。クリップをカットせず、アングルだけ変更したい場合は、「オプション」+テンキーとなります。最初の段階で「画と音」アイコンを押して音メインのアングルを決めておき、あとは「画のみ」のアイコンを押した状態でアングル変更すれば、音だけ固定されます。再生しながらパパパンとテンキーを打つと、リアルタイムでその場でアングル変更していきます。思わず「これはっ去年末のInterBEEで見たEdius6のデモとそっくりではないか!」と思ってしまいました。


 また、概念が「ネスト化されたクリップ」なので、クリップを展開することで、マルチクリップ内のタイムラインが現れ、そこで個別のクリップを移動調整、補正やエフェクトが操作できるのがすばらしいです。これは筆者がFCP 7の時に強く望んでいたマルチ編集の仕様で、それがFCP Xでは実装された印象です。FCP 7のマルチアングル編集は、ギャングだのオープンだの、また設定していても変な動きしたり、ちょっと厳しい場面もあったので、それに比べると飛躍的に使い易くなった印象です。

画面マルチクリップはネスト化され、いつでも展開&調整出来る

複数AVCHDでのマルチカム編集は難あり

画面今回使ったMac:iMac Core i 7 2.93GHz メモリ12GBさっそく、AVCHDでのネイティブ編集、と行きたかったところですが、残念ながらマルチアングルビューを表示した状態での再生は難有りでした。再生後間もなく激しいコマ落ちが発生。これはHDDのスピードというよりかは、おそらくCPUやグラボの限界を越えているといった印象です。(AVCHDネイティブであれば全3ストリームだとしても転送レートは知れたところなので)ためしにマルチアングルビューを非表示にして再生してみたら、コマ落ちすることなくスムーズに再生されました。アングル切り替えもテンキーでサクっと切り替わります。そこで、先ほど記述したショートカット「コマンド+シフト+7」を使い、アングルが見たい時だけマルチアングルビューを表示してアングル変更するという方法をとったらスムーズに編集可能でした。再生途中で常に他のアングルを見る事はできませんが、舞台などは大方アングルが決まっているので、変更したい場面の時だけショートカットでアングルを表示させる方法でも編集自体は比較的スムーズに進行します。※今回の例では、1ストリームがProRes422LTだったので、純粋にAVCHDだけでのマルチカムは試せていません。もし転送レートのせいでコマ落ち発生しているのであれば、AVCHDだけでのマルチックリップの場合、コマ落ちしないかもしれません。ここは未検証ですが個人的にはCPUなどの処理ではないかと思っています。

ネイティブAVCHDマルチはプロキシ編集で

画面ボタン一つでプロキシとオリジナルを切り替えられるFCP Xでは読み込みウインドウで「プロキシメディアを作成」のチェックを入れておくと、低解像度版のプロキシ映像を同時に作ってくれますが、読み込みには、ほぼ実時間を要します。ただ結果的にAVCHDの場合はこのチェックを入れて取り込みすることで、その後のマルチクリップ編集が劇的に快適になることが分かりました。AVCHDネイティブでのマルチアングル表示編集は難ありと前述しましたが、プロキシを使うことでサクサクと編集出来ます。秀逸なのは、「環境設定」/「再生」内のボタン一つで、いつでもオジリナルとプロキシを切り替えられるところです。気になる容量ですが、AVCHDのオリジナルに比べてプロキシメディアは0.8倍くらいの容量です。「イベント」フォルダの「Proxy Media」内に収められています。試しにQTプレーヤーで開いてみたら、960x540のProRes422Proxyでした。プロキシ編集の場合、オリジナル+プロキシとなるので、AVCHDメイティブ編集に比べ、容量は2倍程度になりますが、それでもPreRes変換時代に比べたら遥かに少ない容量で編集できます。マルチカム編集後はProxyメディアは捨ててオリジナルに戻せばいいだけです。オリジナルでもマルチアングルビューを閉じておけばスムーズに再生できます。FCP XでAVCHDマルチアングル編集するのであれば、このワークフローが一番いいでしょう。難ありとすれば、取り込み時にトランスコードの時間を要することですが、まとめて取り込んでおいて、次の日編集するといった構えであれば問題ないと思います。尚、プロキシ作成は取り込み後も行うことが可能です。その場合、バックグラウンドで行われるので、とりあえずオリジナルで編集を進めておいて、トランスコードが終わった段階でプロキシに切り替えて編集、最終的にオリジナルに戻す、なんて芸当も簡単に出来てしまいます。

 かくしてTheater劇団子「トキタ荘の冬」の2時間の舞台は、一度もトラブること無くFCP Xでスムーズに編集できました。FCP7の時は一端ProRes422LTに変換して編集、その時点で容量は10倍程度に膨れ上がりました。また高速のHDDを使用していても転送レートの限界でコマ落ちが多発、我慢の編集が続きました。もちろん何台ものHDDをRAID0で組んで、SATAなどの高速インターフェイスでつないで編集すれば快適に編集できたかもしれません。しかしながらそこまでのコストをかけて編集することを考えれば、FCP XでのAVCHD編集は劇的に快適になったと言えます。しかしながらFCP7からの仕様の変更は細かい部分でまだ未知なところが多数あります。案件によってはまだFCP 7のほうが確実な場面もあり、完全にFCP Xに移行というわけには行きませんが、普段の編集はFCP 7で、AVCHDのマルチアングル編集はFCP Xでと、今後は案件ごとにFCP7とFCP Xを使い分けて作業することになりそうです。

追記1:FCP Xは残念なことに、タイムライン上でDVDのチャプターマーカーが付けられません。今後のVerアップで実装されることを期待したいですが、かねてから円盤メディアにネガティブだったジョブスの意向もあるので、あまり期待できないでしょう。現状ではCompressor上でチャプターマーカーを付けていく方法をとるしかありません。 →対策としてはチャプター部分のTimeをメモして、Compressorにてマーカーを打って書き出します。(Compressorのモニタ上でTCが打ち込めますので、メモしたTCを打ち来んでマーカーを付ける、の繰り返しです)

追記2:マルチアングル編集をしたFCP Xのプロジェクトを Xto7 for Final Cut ProにてFCP 7に転送してみましたが、マルチクリップ部分は再現されませんでした。今後のVerアップで対応してくれることを期待したいです。

追記3:FCP Xの仕様に抵抗ある人は、いきなりFCP Xを始めるより、まずはiMovieを使ってみることをおすすめします。ポイントは最初から高度な編集をしようと思わないことです。iMovieは使い込んで行くうちに、そのすばらしい編集概念、奥深さが分かってくるソフトです。

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