2013年9月11日 of GAIPRO.NEWS

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最小で最大の撮影を実現させる機材選び

2013.9.11

DSLRの登場で撮影スタイルも多様化していますが、こと弊社が注目しているのは「いかにコンパクトな機材で、現場で時間をかけず、どこまでの映像を撮影できるか」です。従来の撮影スタイルでは移動ショット一つ撮影するのでも、レール、クレーン、それを運ぶ移動車にヒューマンパワーが必要でした。しかし弊社のNEWSでも幾度か書いてきたように、DSLRの登場でスライダーを代表とするミニマムな機材が生まれ、カメラや機材の組み合わせ次第で非常にコンパクトな体制でリッチな映像を撮影できるようになりました。今回は、弊社がいろいろ探って来た機材たちの中で、とことんコンパクトにこだわった機材リストを紹介してみます。特に今回は「クレーン効果」「ドリー効果」に的を絞って紹介します。かなり弊社よがりな記事ですのでご了承ください(w

マイクロフォーサーズという選択肢

DMC-GH2GH2はコンパクトなボディーで今でもコアなファンが多い
 コンパクトな体制を作るためにはまずカメラの選択です。DSLRではコアファンが多いPanasonic DMC-GH2。話題になったビットレートのハッキングもさることながら、マイクロフォーサーズ(以下、MFT)ならではのコンパクトさ、高画質、高機能でGH3が発売された現在でも、その魅力は色あせることはありません。DSLRの代表格となっているEOSムービーもいいのですが、実機が大きくなってしまうのと、それなりのEFレンズを付けてしまうとちょっとしたハンドヘルド型の業務用カメラとさほどかわらない重量になってしまいます。MFTの魅力はレンズもコンパクトな事です。背景ボケが弱いという意見もありますが、レンズの特性、焦点距離、さまざまなファクターをきちんと理解し適材適所で使用する事で、深度の浅いリッチな画を撮影する事も可能です。特にノクトンなど明るめのレンズはボケが作り易いです。
GH2右はEOS 5D MarkIIIとEFレンズ群。並べてみると、そのコンパクトさは一目瞭然

下記に実際に今回のセットで撮影した映像をアップしておきますが、その際に使ったレンズリストは以下となります。

1)はとりあえずの標準ズームですが、中望遠からのボケも綺麗でかなり使えるレンズです。AFで使うのでも一番動画用に近いレンズ。ただ常時AFはやはりこの手のカメラは厳しい場面が多いですね。

2)は部屋など撮影するには便利な超広角レンズです。歪みがよく補正されていて樽型になりにくいのも特徴です。派手なクレーン効果を狙うなら持っておきたい1本ですね。

3)はF1.7と明るいパンケーキレンズでプライベートではもっとも使用頻度が高いレンズです。ボケも綺麗で、深度を浅くして背景を素直にボカしたい時はコレを使います。ただ明るいレンズなのでNDは常備ですね。

4)は言わずと知れた超ド級に明るいレンズ。とりあえず深度を浅くしたいならコレですね。若干惜しいのは絞りの形がカクカクしてるのでボケた光が正円にならず若干多角形になってしまうところです。開放で使うと収差も出てきます。弊社ではF1.4程度で使う事が多いです。外ロケ時はこちらもNDを常備です。

GH2/GH3はプロの現場でも十分耐えうる今や最強のコンパクトデジタル一眼かと思っています。GH2はビットレートをハックすれば高品質になりますし、GH3はもともとビットレートが高いモードもありイントラフレーム収録も出来ます。そしてMFTレンズのコンパクトさゆえにとても身軽に撮影できるカメラです。


携帯可能なコンパクト三脚1本でパン、ティルト、クレーン、ドリーを即座に実現させる

PocketJibTraveler

これが今回の話の要なんですが、まず最終的に弊社が選んだセットを以下にご紹介しておきます。

1)Manfrotto 055CXPRO3(コンパクトカーボン3段三脚)

2)Manfrotto 701HDV(フラッドベースビデオヘッド)

3)SLIK レベリングユニット(水平出し用レベラー)

4)Kessler Pocket jib traveler(小型クレーン)

5)Kessler Kwik Release & Mini Plate(クイックシューセット)

6)VARAVON SLIDECAM LITE600(小型スライダー)

GH2と、上記セットの組み合わせで撮影してみた下記映像をとりあえずご覧ください。



これ、1人で機材持って海やホテルに行ってちょろっと撮影してきた、と言ったらどうでしょう?実際そんな感じです(w それでは順を追って、何故これらの機材を選んだか簡単に説明します。

PocketJibTraveler全体として軽いのでjibのままサっと持ち上げて移動できるSLIDECAM Liteスライダーにいたっては、もう片手で持って瞬時に移動可能


1)Manfrotto 055CXPRO3(コンパクトカーボン3段三脚)

055CXPRO3真ん中の支柱が伸びるのでプラスαの高さが得られるのもイイ全体で1kgを切ってしまう脅威の軽さ。しかもコンパクト。MacBookAirより軽いです(w カーボンなので軽い上に剛性も高いです。75mmレベラーの535や100mの536を使っている方なら分かると思いますが、まさにあの三脚のコンパクト版です。3段全開に伸ばした状態では自分の首下くらいまでですが、さらに真ん中の支柱を伸ばすと自分の頭くらいまで伸びます。実はこの支柱が面白くて真横にも倒れる機構があります(今回はまったく使わないですがスチール用途にはいいですね)もちろん脚はガツっと広げる事も可能でローアングルにも対応しています。GH2程度のコンパクトなカメラにはうってつけの三脚です。

2)Manfrotto 701HDV(フラッドベースビデオヘッド)

701HDVこのクラスでカウンターバランスがとれるのはいい。ビデオ撮影する場合は、やはりビデオ雲台が必要ですが、一般的なビデオ雲台はそれだけで重くなってしまいます。701HDVは非常にコンパクトで軽いビデオ雲台です。また、よくある「なんちゃってビデオ雲台」とも違います。重量が1kgを切るので055CXPRO3と組み合わせても2kg以内。動きも結構滑らかで、プレート機構によりカウンターバランスが取れるのが最大の魅力です。バネの跳ね返りは軽いですがGH2程度のカメラにはちょうど良い感じです。ただレンズによってはティルトした際に沈んでいってしまいますが、サイドのツマミを気持ち締め気味で操作すればティルト時にピタって止まってくれます。(締め過ぎは機器を摩耗させるので注意)トルクが一定しかないので、さすがにザハトラー並の操作性は求められませんが、このクラスのヘッドの中では一番使い易いのではないかと思います。055CXPRO3との組み合わせで「かえり」が若干心配でしたが、想像していたより無かったです。
「かえり」とは、パンした時に三脚のたわみ等で画角がパンとは逆方向に戻ってしまう現象の事

3)SLIK レベリングユニット(水平出し用レベラー)

SLIKレベルユニットは055CXPRO3の台座裏3本のネジを締めることで不意な回転を防げる三脚の伸び縮みで水平合わせるというのは、「現場で気楽に使う」というコンセプトから逸脱します。レベラーは水平出しには必須のアイテムですね。055CXPRO3は台座に3/8ネジが付いているだけですし、701HDVヘッド自体もフラッドベースヘッド(3/8ネジ穴)ですので、ちょうど2つの間にかましてあげる感じです。(SLIKレベラーの上のネジは1/4なので、1/4→3/8変換は必要)
 ところで三脚(055CXPRO3)の台座にレベラーを付ける時には注意が必要です。3/8ネジ1本で固定だけだと、ネジが緩んで不意にレベラーが回転してしまう事があるので、台座の裏から3つの小さなビスを回して完全にレベラーを固定するのがポイントです。また、のちに書きますが、今回のセットでは脚とヘッドの間にもう一つユニット(クイックシュー)を付ける予定です。これはヘッドとジブを即座に交換する際に必須のセットです。ただ付ける事で多少重量は犠牲になりますが‥。軽さを重視するなら付けなくてもいいかもしれません。その代わり水平は三脚側で、ヘッドとジブの交換もちょっとだけ苦労します。

4)Kessler Pocket jib traveler(小型クレーン)

Pocket jib traveler部品がバラけないのは現場で予想以上に使い勝手がいいのですその名の通り、かなりコンパクトなジブ。一番の特徴としては、ウエイトとそれを止める金具以外、部品がまったく出ない事です。一つの固まりを展開してクレーンが完成。この簡単さは現場で使ってみて実感します。コンパクトのわりに剛性が高く、かなりしっかりした作りです。思えば十年前くらいにSK-1000という、所謂DVクレーンと呼ばれたコンパクトクレーンをよく使っていました。部品がすべてバラバラになっているため、現場で組み立てるのには骨が折れました。現場では「ここはクレーンやりましょう」なんてとても気軽には提案できません。Kessler Pocket jib travelerだったら「ここ、クレーン行っときます?」なんて気軽に言ってしまいそうです。尚、ウエイトは別売りですが、Amazonで1.25k程度のダンベル用小型ウエイトを数百円で購入、 Pocket jib travelerにはベストマッチでした。GH2であれば、1.25k一個で問題ありません。(ただしジブを一番長く設定した場合、レンズによっては多少ウイエトが足りないかもしれませんが、身の回りの物をくくりつける程度で結構バランスがとれます)せっかくコンパクトなので、ジブ自体がもう少し軽量だったらいいのに、とは思いましたが、あまり軽量だと安定しないので、ここは仕方ないでしょう。Pocket jib traveler使い方次第でかなり効果的なクレーン効果が狙える
 似たような製品は他にもありますが、このクラスの中ではパーツレスなコンセプト、デザイン、剛性、全体的な完成度は群を抜いていると思います。GH2やBMPCC(後述します)にはベストマッチなジブかと思います。もちろんEOSや他のハンドヘルド型カメラでも十分使えますが、その場合ウエイトをもう少し重いものに変える必要がありそうです。そうなると結果としてかさばってきて、今回のコンセプトからは外れてしまいます。ホットシュー1.25のウエイトは純正のバッグに一緒に入れることが出来る購入した1.25kのウエイトは、Pocket jib traveler純正のバッグに一緒に入ってしまったので、まったくかさばりません。Pocket jib travelerの実際の操作などの詳細は割愛しますが、本家のPVを見れば特徴がよくわかると思います。とにかく今回のニュースを書くにあたって中心となった特機です。尚、知る限りでは日本の販売代理店は無い模様なので、本国から輸入するしかなさそうです。クレジット決済で、航空便で注文から3〜4日程度で届きました。

5)Kessler Kwik Release & Mini Plate(クイックシューセット)

Kwik Releaseレベラーの上にクイックシューを付ける今回のセットで考えたいのは、現場にてヘッドとジブを気軽に三脚に取り付け&交換する方法です。一番安易な方法はヘッドの上にカメラを付けるのと同じように1/4ネジに付けてしまうものですが、701HDV程度のヘッドではジブの重量に耐えきれず、どんなに留め具を締めたとしてもすぐに傾いてしまいます。機器の摩耗、破損にも繋がります。そこで水平を取るSLIKのレベラーの上に共通のクイックシューを付けて、現場でヘッドとジブを即座に載せ変えられるようにしてみました。またこうする事でヘッド利用時もジブ利用時も、三脚自体を調整せずともすぐに手元で水平を整える事が出来ます。クイックシューは市販のもので良いものがあれば、それもいいですが、純正の Kwik Release & Mini Plateを選んだのは、Pocket jib travelerに2本のビス(六画レンチ使用)でしっかり止める事が出来るからです。実は最初、会社にあった適当なクイックシューを使ってみたのですが、真ん中1個のネジで止めるしかなく、かなりキツく締めたとしても回転した際にすぐに緩んでしまう事が多かったです。仕方なく再度Kwik ReleaseとMini Plate2つを追加で輸入しましたが、素直にPocket jib traveler購入時に一緒に購入しておくべきでした。(輸入代金が2倍かかってしまいました)尚、KesslerのKwik Releaseシリーズは、本体は1種類ですが、それに取り付けるためのプレートは複数出ているので注意が必要です。今回は「Mini Plate」を、ジブとヘッドに各々取り付けるため、2つ購入しました。

Mini PlateMini Plateは2つのビスでしっかり止められるので不意な回転を防止できるKwik ReleaseKwik Releaseも付属のビスで下のレベラーをしっかり止める事が重要。(回転防止)Mini Plate701HDVとMini Plateはビス1つで止めるしか無いのでしっかり固定する


さて、非常に軽かったカーボン三脚055CXPRO3ですが、SLIKのレベラー、Kwik Release、701HDVヘッドと付けると、それなりの重さになってしまいました(w ただ、それでもDAIWAのVT-523と同じくらいの重量(VT-523は弊社でも業務用コンパクト三脚として長らく活躍)。いい組み合わせだと思います。通常通りヘッドで撮影していて、必要に応じて即座にヘッドを取り外し、ワンタッチでジブに切り替えられます。あとはジブを広げる前に手元で水平合わせればOK。すぐにクレーン撮影に移れます。
Mini Plate瞬時にヘッドにMini Plate瞬時にジブに


6)VARAVON SLIDECAM Lite600(小型スライダー)

ホットシューテーブル上でも活躍。非常にコンパクトで使えるスライダーです日本の量販店でも比較的手の入り易い超コンパクトスライダーです。(弊社はSYSTEM5さんで購入)ローラーベアリング方式なので、走り出しもスムーズです。かなりコンパクトながら剛性もなかなかのもので、業務では普通にAF105のロケで使っています。GH2程度のカメラにはベストマッチなスライダーと言えます。使う際は弊社ではヘッドのプレートに付けて使っています。ヘッドを付けず直接三脚にスライダーを付けてしまってもいいのですが、ヘッドの上に付ける事で微妙にパンしながらスライドする事もでき、センターフォローが可能になります。ワンポイントとしては、701HDV付属のプレートには1/4ネジと回転防止のピンがあり、この回転防止のピンにSLIDECAM本合をうまくかませながら1/4ネジでとめてあげると、不意な時にスライダーが回転してしまうのを防げます。VARAVON SLIDECAM LITE600のスライドプレート部分のネジは3/8です。ここに同じくSLIKのレベラーを取り付けてカメラを簡単に傾けられるようにしています。もちろん他の雲台とかでもいいと思います(ただし穴は3/8である必要があります)
SLIDECAM Lite600センターフォローするためにヘッドの上に付けるのがいいSLIDECAM Lite600レベラーによりカメラの方向も簡単に変えられるMini PlatSLIDECAM Lite600この回転防止ピンにスライダーの縁を密着させ固定するのがポイント


さて、このセットで週末に熱海に出かけてみました。筆者の家族をモデルとして(w 実に気楽な撮影でした。というか、「これでいいんじゃん?」と思ってしまいました。通常業務では、やはり三脚はザハトラー、カメラはAF105やEOS等を使っていますので、こうも気楽にはなりませんが、撮ってきた画をつなげている過程で「十分だな」と一人つぶやいてしまいました。(ちなみに編集はFCP Xにて。Prと違ってトランジションが魅力ですね。)実際の業務でも、たとえば飛行機でいくようなロケや、あまり機材を持って行けないロケでは積極的に提案できるセットかと思います。

GH2全体的な分量はこの程度です。バックによっては1つにまとめられそうです実はこのセットを作ろうと思った一番のキッカケはBlackmagicDesignから発表されたPocketCinemaCamera(BMPCC)の登場でした。周知の通り、MFTマウントによりそのままGH2のレンズ資産を活かせますし、なんたって13Stopのダイナミックレンジ、そしてiPhone並のコンパクトな裸体。この超コンパクトなモンスターカメラの身軽さをスポイルする事なくリッチな映像が撮れるセットを組んでみたい。そんな思いから今回のセットが誕生しました。しかしこれまた周知の通りBMDは発表から実際に手元に届くまでにかなりの時間を要します。弊社では発表直後に予約を入れ、実際に発売されたのが7月後半でしたが、未だ届いていません。仕方なくGH2で初ロケに望んだのでした。結果はGH2でも十分綺麗な映像が撮れると改めてGH2のポテンシャルに驚かされました。逆にBMPCCの場合、センサーがSUPER16なのでダイナミックレンジはあれど深度は深いですしレンズも望遠側にシフトする事が予想されます。普段はGH2ボディーを使い、窓際の撮影時にBMPCCボディーに切り変える、なんてのもアリかと思われます。

最後に、どんなに身軽に移動撮影やスタビライズが出来たとしても、ライティングだけはどうにもなりませんね。コンパクトLEDが登場してきたとて、やはりライティングだけは技術とヒューマンパワーが必要だと感じています。映像ってつまりは光ですから、ライティングほど重要な要素はありません。しかしながら今回のような機材チョイスでベースとなる動線は作れるはずです。あとは現場で光を読んで、ノーライトでも地あかりである程度いいショットが撮れるセンスがあれば最小で最大の撮影が出来るかもしれません。そしてその映像を見た時、きっと「撮影って楽しいな」と思えるはずです。


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